本年3月にキリンホールディングスが公表した「SSBJ基準に準拠したサステナビリティ関連財務開示」が、ESG・サステナビリティ担当者の間で注目を集めています。背景には、今後の有価証券報告書におけるサステナビリティ開示の義務化があり、2027年3月から、プライム上場企業の時価総額3兆円以上の企業から順次、SSBJ基準に基づく開示が求めらます。 これは、2025年7月に金融庁が発表した「サステナビリティ開示基準の適用及び保証制度の導入に向けたロードマップ」に基づくもので、ISSBのS1・S2を踏まえたSSBJ開示のフレームワークを土台に、企業が、自社で重要(マテリアリティ)と定義する領域について、ガバナンス、戦略、リスクと機会、指標及び目標の4要素に沿って開示することが求められます。
時価総額3兆円以上の企業から義務化が始まる(※)中、時価総額が約2.2兆円(6月17日時点、以下同)のキリン(12月決算)が、義務化に先駆けて自主的にSSBJ基準に準拠した開示を行った点が注目されています。更に、気候変動だけでなく、人的資本、人権、消費者課題、健康長寿社会など、幅広いテーマについて財務的影響を含め、定量かつ定性的に開示している点も特徴的です。この動きは、今後SSBJ基準の適用対象となる大企業にとっても無視できません。足元で時価総額が3兆円を超えるキオクシア、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、東京エレクトロンなどの大企業約85社(同上)においても、キリンの先行開示例を意識しながら、自社にとって重要な領域をどのように4要素で説明していくかが問われます。
キリンは人的資本の領域で、従業員エンゲージメント、安全管理指標、国内女性経営職比率の実績値を定量的に開示している点で高く評価できます。一方、指標の網羅性や比較可能性という観点では課題も残ります。今後、投資家が無形資産の企業間比較を行う上では、一定程度共通化された指標の整理も重要になっていくと考えられます。ISSBにおける人的資本の開示フレームワーク作り送れる中、ISO 30414の併用が進むと考えられます。
本年5月に公表された人的資本可視化指針(改訂版)の付録②では、SSBJ基準に基づく開示例が中心となり、ISO 30414改訂版については紹介されませんでした。これに対しイギリスのCRUF(海外投資家・アナリスト等で構成されるコミュニティ)のエキスパートも、日本国内で20社超の認証が進むISO 30414を活用すべき旨、日本の金融庁と証券取引委員会に対して、アドバイスしています。
今月、有価証券報告書等が公表される3月決算の大企業のサステナビリティ開示にも是非ご注目ください。
※:時価増額3兆円以上の企業 →2027年3月期
:時価総額3兆円未満1兆円以上の企業→2028年3月期




