・インタビュイー:
日立建機株式会社 豊島CHRO、小林部長代理
HCプロデュース マネジャー 居原
・インタビュアー:
HCプロデュース 代表取締役 保坂
2023年10月、日立建機株式会社が機械メーカーで初めてとなるISO 30414の認証を取得し、2024年11月には「Human Capital Report 2024」を発行。
過去3年間の人的資本に関するデータを体系的に整理し、認証取得に至った経緯や今後の展望について、豊島CHRO、及びプロジェクト推進を担った小林様に話を伺った。
【ISO 30414認証取得の背景】
保坂(HCPro):
ISO 30414認証を目指された背景について、お聞かせください。
豊島CHRO(日立建機):
ISO 30414認証の取得を目指したのは、人的資本経営の重要性を再認識し、それを経営戦略の柱の一つに据えるためです。顧客や投資家との信頼関係の強化に加え、従業員にも自社の取り組みをより深く理解してもらうことが重要だと考えました。
また、これまで人的資本に関するデータの定量的な可視化が十分に行われておらず、データを活用した意思決定が課題となっていました。ISO 30414認証取得を通じて、人的資本の現状を明確にし、改善の方向性を定めることができると考えました。
日立建機 執行役常務CHRO 豊島 聖史氏
1984年日立製作所入社。2019年日立建機に入社し、現職

【ISO 30414認証取得に向けた取り組み】
保坂(HCPro):
認証取得に向けて、どのような取り組みを行われましたか?
小林氏(日立建機):
まず、人的資本指標に関する理解を深めるために、ISO 30414解説講座の受講や外部のコンサルティング企業との連携を進めました。その上で、ISO 30414が求める指標を基に、データの体系的な収集・整理を実施しました。
日立建機 人財本部人事統括部連結人事部人財ガバナンス推進グループ部長代理 小林 和宏氏
食品メーカーを経て2013年日立建機入社。本社人事、工場総務を経て2023年より現職

具体的には、ダイバーシティやエンゲージメント、研修への投資状況などを可視化し、他社比較を行うことで課題を特定しました。その結果、例えば女性管理職比率や離職率を重点取り組み課題として特定し、改善に向けた施策の検討につなげています。
また、経営陣との対話においては、ISO 30414の取り組みを通じて収集したデータという”ファクト”と、KGIという”あるべき姿”を示して共通言語化することで、人的資本経営の実践をより高度化させることをめざしました。これにより、経営戦略の一環としての人的資本経営の取り組みをより実効性のあるものに進化させることができたと考えています。
【審査を通じて見えてきた日立建機の強み】
保坂(HCPro):
審査を通じて、どのような強みや課題が見えてきましたか?
居原(HCPro):
強みとしては、「Kenkijinスピリット」という日立建機のありたい姿を理解し、その実現のために自ら考えて行動するという価値基準がグローバルの社員全員で共有されていることです。
また、技術継承やグローバルリーダーの育成においても継続的な投資を行い、次世代の人材育成に力を注いでいます。具体的には、社内教育プログラムの充実、海外拠点との連携を深めたリーダー育成プログラム、デジタル人材を体系的に育成するプログラム等です。こうした取り組みにより、変化の激しい市場環境においても高い競争力を維持し続けることができています。

HCプロデュース マネジャー 居原 健
リクルートからHCプロデュースに参画。ISO 30414審査や人的資本強化のコンサルティングに従事。
【ISO 30414認証取得後の変化と展望】
保坂(HCPro):
認証取得によって、社内外にどのような変化がありましたか?

小林氏(日立建機):
認証取得前は、「認証を取得することが本当に必要なのか?」という経営層から疑問の声が上がることもありました。しかし、認証取得後は、求職者や従業員、さらに外部の様々な方からのポジティブな反応が増え、人的資本経営に対する社内外の関心が高まりました。 また、経営層から社内表彰制度への推薦が出るなど、組織全体での人的資本経営の推進が加速しています。加えて、第三者機関であるHCProによる審査を通じて、対外的な信頼性が向上したことも大きな成果です。(表彰状授与の様子。写真左が小林氏、右が認証取得プロジェクトの責任者で人事統括部長の澤田氏)
豊島CHRO(日立建機):
今後は、ISO 30414を活用し、多様な人材の活躍推進やグローバル市場での競争力強化を図りたいと考えています。また、業界全体での人的資本経営の推進にも貢献していきたいです。
【居原(HCPro)からのコメント】
ISO 30414の審査を通じて、日立建機様が人的資本経営の重要性を深く理解し、それを組織全体に浸透させている点が非常に印象的でした。特に、Kenkijinスピリットを軸とし「Challenge」「Customer」「Communication」と、「CIF(Customer Interest First)」いう共通の価値観が社員の間でと根付いていることが際立っています。グローバルでのリーダー育成、DX戦略を支える人材の育成施策の推進等、人的資本経営の先進的な取り組みが多くありました。こうしたアプローチが、持続的な企業成長と競争力強化につながると確信しています。
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