【対談企画】ドイツ銀行はなぜISO 30414を取得したのか?

2021年1月にドイツ銀行のアセットマネジメント会社DWSがISO 30414の認証を取得したのに続き、3月にはドイツ銀行も取得しました。

その背景について、HCPro/保坂が、ヒルガー・ポスマン(ドイツ銀行グループ、ドイツ北・東地域担当人事部長)に伺いました。

※ 関連対談記事「ISO 30414とは?」はこちら。

 

保坂:

ドイツ銀行はなぜISO 30414の取得を目指したのですか?

 

ヒルガー:

ドイツ銀行にとって、認証の取得は自然の帰結でした。というのも、我々は投資家からの要求のみならず、人的資本と組織パフォーマンスの関係に関する研究の第一人者だった、サーランド大学のクリスチャン・シュルツ教授の調査を受け、2013年から人的資本レポート(Human Capital Report)を開示し始めていたからです。

同教授が考案したHCR10ランキングは、人的資本の開示レポートを評価したランキングで、ドイツ銀行はそこに含まれるDAX30主要銘柄企業の中で何度か1位になっていました。このHCR10がISO 30414の土台になったとも言えるのです。その後、2015年からISOメンバー国の20を超える規格団体(独DIN、英BSI、米ANSI等)が協働し始め、2018年にISO 30414が策定されたのです。

 

保坂:

なぜドイツ企業による認証の取得が進んでいるのでしょうか? 

 

ヒルガー:

上記の背景に加え、組織にとって重要なステークホルダーの1つが将来の人材だという点が挙げられる。ドイツにとり、国内外の人材を惹きつけることはとても重要であり、ISO 30414は求職者が雇用主を選ぶための情報を提供するのに役立つ。

 

※ドイツ銀行「Human Resources Report 2020」より抜粋①:100ページ以上に渡り人的資本を網羅的に開示している

 

保坂:

ドイツ銀行がISO 30414を取得するまで、どれくらい時間がかかりましたか?

 

ヒルガー :

約6か月かかりました。ただ、お話ししたように、ドイツ銀行は(他のDAX企業もそうなのですが)ある意味HCR10で準備ができていたところがあります。一般的に言うと、認証を取得するまでには3か月から9か月かかると思います。ただし、データの準備度合いによるので、もっと時間がかかることもあります。

 

※ドイツ銀行「Human Resources Report 2020」より抜粋②:「FTEをベースとした従業員数の内訳」や「後継者計画の詳細」など、日本企業では開示が少ない指標も含め、ISO 30414に準じた開示がされている

 

保坂:

認証を取得する上で、苦労した点はどのようなところでしたか?

 

ヒルガー:

「外部労働力」については、様々な形で活用しているため、定義に合わせてデータを揃えるのにとても苦労しました。なお、銀行業という仕事の性質上、事故やケガといった労災関連の指標は“マテリアリティ(重要性)”に該当しないと考えているため、データを開示する代わりにその点について人的資本レポートの中で説明を入れました。

 

保坂:

ISO 30414を取得したことで、ドイツ銀行のビジネスにとりどのような利点がありましたか?

 

ヒルガー:

ISO 30414に則ったヒューマンキャピタルレポートによる人的資本の情報開示が、ビジネスに影響を及ぼすまでには2,3年かかると考えている。しかしながら、認証の取得により、投資家を始めとする様々なステークホルダーから注目が集まり、対話が増加する等、既に良い影響が出始めている。

 

【プロフィール】

ヒルガー・ポスマン

ドイツ銀行ドイツ北・東地域担当人事部長

ヒルガー・ポスマンは長年に亘り、海外を含む様々な立場で人的資本のマネジメントに従事してきた。ゴーインガー・クライス*の活動に熱心に従事し、特に人的資産の開示を通じた無形資産の計測・評価を推進している。この一環で、国際的なネットワークを活かし、10年前から独DINおいてISOにおける人材マネジメントの規格化を推進している。ヒルガー・ポスマンは、国際的なレベルで、企業の評価において人的資本が財務指標と同等の重要性を持つべきことを確信している(hcm-impact.com参照)。

*人的資本や雇用の分野でパイオニアとして活躍する、ビジネス及び科学の分野で責任ある立場の人々によるイニシアティブ。